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神曲について(ドラマ魔王に関連して) [魔王(日本版)]

神曲〈1〉地獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)神曲 上   岩波文庫 赤 701-1やさしいダンテ〈神曲〉4話では、ダンテの神曲が出てきました。概要については、ウィキペディアで読むことができます。
ウィキペディア「神曲」のページ

地獄篇(Inferno)煉獄篇(Purgatorio)天国篇(Paradiso)三部構成。
三行を一連とする「三行韻詩」であり、各篇は3の倍数である33歌から構成されていることになる(地獄篇は序章となる1歌を加えた34歌)。キリスト教における「三位一体」を文学においても表現しており、引用された地獄の門でも、三位一体である「父と子と聖霊」についての節がある。ドラマ中で、この図書が分類番号333に置かれているというのも、この「3」という数字へ意味づけです。

あらすじはこんな感じ。
西暦1300年の聖金曜日(復活祭前の金曜日)、暗い森の中に迷い込んだダンテは古代ローマの詩人ウェルギリウスに出会う。彼に導かれて、地獄・煉獄・天国と遍歴。
地獄の九圏を通って、地球の中心部、魔王ルチフェロ(サタン)の幽閉されている領域まで至る。
そこから、地球の対蹠点に抜けて煉獄山にたどりつく。煉獄山では登るにしたがって罪を清められていき、煉獄の山頂でダンテはウェルギリウスと別れることになる。
ダンテは再会した永遠の淑女ベアトリーチェの導きで天界へと昇天し、各遊星の天を巡って至高天(エンピレオ)へと昇りつめ、見神の域に達する。
原題はLa Divina Commedia 神聖なる喜劇(ディヴィーナ・コンメディア)。悲劇ではなく結末に救済されることを意味する。
ファウスト同様に、地獄を見た後に「救済」が与えられています。ファウストも、神曲も「作者」が主人公と言ってよい作品だと思います。そして、彼等は未来の救済を信じ、それを文学にした。


今回、引用されたのは「地獄の門」についての一節です。地獄篇の第3歌。いよいよ地獄へと踏み込んでいくダンテの前に現れた地獄の門。

ドラマでは 冒頭の一節が次のように訳されています。これ、出展が分からないんです。韓国版の日本語字幕と一緒ですね。韓国版ドラマで、イタリア語から訳されたものを、日本語に訳したのかな?
私の持っている山川訳と比べると、「ここを通り過ぎて、俺の所にやってこい」というメッセージが強く打ち出されているように感じますね。
(ドラマ「魔王」より) 苦悩の都に向かう者、我を通り過ぎよ 永遠の苦痛に向かう者、我を通り過ぎよ 魂を失った人を訪ねる者、我を通り過ぎよ (岩波文庫版の山川丙三郎訳) 我を過ぐれば憂ひの都あり、 我を過ぐれば永遠の苦患あり、 我を過ぐれば滅亡の民あり 義は尊きわが造り主を動かし、 聖なる威力、比類なき智慧、 第一の愛我を造れり 永遠の物のほか物として我よりさきに 造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ

つづく一節では、父=聖なる威力、子=比類なき智慧、聖霊=第一の愛、と三位一体の神が地獄の門を作った事が説明されています。


これを元に、ロダンがブロンズ像を作りました。作品は未完です。有名なの「考える人」も、この門の上で、門を通過する人々を見据える存在として作られました。これは、地獄をめぐり、罪人たちを見ることになる「ダンテ」自身を象徴している存在です。

ドラマ中では、「目を閉じた彼が目を開くとき、審判が行われる」という説明がなされます。多くの罪と悪を見つめつづけ、自らを「審判者」と定義する弁護士の意志が見受けられます。
弁護士は「審判者」と自分を定義しています。それはキリスト教におけるロゴス=(言葉、論理)の象徴=キリスト(三位一体での子)への挑戦でもあるように思います。人間社会での法でも、神との律法の誓いにおいても、刑事が罰せられてないように見えることに、彼は疑問を持っている。自ら「論理」を創造し、それに従って審判を行う。だからこそ、弁護士はルシファーに模されている。

ロゴスは、ミュトス(物語)と対比する言葉。空想し物語る言葉ミュトスに対して、論証する言葉ロゴスがある。しかしながら、弁護士が行おうとしているのは、本当に「理性」「論理」によるものなのか?決してそうではない。そこに、弁護士の誤算がある。


このドラマで、「ダンテ」となり地獄の中に踏み出すのは刑事。そして、その最下圏・第九圏裏切者の地獄 -「コキュートス」(Cocytus 嘆きの川)と呼ばれる氷地獄で待つのが、「ルチフェル=ルシファー=サタン=魔王」。コキュートスは「裏切りものの地獄」で、裏切りが最も重い罪だと定義されている。
弁護士自身が、自分は審判者であると同時に、罪人ルシファーであると思っていることが、この引用から分かります。では彼の罪「裏切り」とは何か?
兄弟を救えなかったことか?真実を明らかにするのを諦めてしまったことか?神を信じなかったことか?日本版では、どのように作ってくるのか?興味深く見つめて行きたいと思います。

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